イアン・フレミングの著作権が日本などで切れたらしい

 皆さんはイアン・ランカスター・フレミング (1908 - 1964) をご存知でしょうか?

 そうですね、あの北大路魯山人並みのズタズタ食生活でポックリ逝った 「ジェームズ・ボンド」 シリーズの生みの親でもあるイギリス人作家・脚本家、元英国海軍軍中佐ですね。

 元ロイター通信モスクワ支局長でもあり、第二次大戦中は NID にてスパイとして活動していたそうです。

 ちょっとした話題になっていたりなっていなかったりするのですが、日本・カナダ・ニュージーランドなどを含む一部国家において、彼の著作権が消滅したらしい [外部サイトへ飛びます] のでその件について書いてみたいと思います。





 没年に注目してもらいたいのですが、このエントリーを書いている時点でフレミングの死から既に50 年以上が経過していることがわかります。

 日本国の著作権法では、書籍の著作権は作者の死後 50 年間保護されることになっています。フレミングの没年は 1964 年、今は 2015 年。丁度 50 年の歳月が経過しきったという具合です。

 フレミングの本国・イギリス、そしてイギリスを含む欧州連合の著作権は著作者の死後 70 年間を保護期間としており、一応本国などではその規定が適用されます。アメリカはお察しのとおりもっと長く、実質的には永久とも言われています。

 しかし、上記の通り日本含む一部諸国はそれよりも短い 50 年を保護期間としており (というかベルヌ条約によれば基本 50 年間の保護らしいが) 、著作権は基本的に内国民待遇、つまり日本の国内法で定めた期間のみ保護することにしています。これはカナダやニュージーランド、その他アジア・アフリカ諸国も同様だそうです。これは上記リンク先の 「パブリック・ドメイン・レビュー」 に記載されていたものを解釈した結果です。

 因みに日本国よりも短い期間しか保護しない国の著作権においては、相互主義によりその期間のみ保護することを定めております。

 ただ、こうした外国著作物の保護期間について、日本では事態をややこしくする戦時加算の規定があります。詳しくは割愛します。だって今回はどうやら関係ないそうなので。

 イギリスがサンフランシスコ講和条約に批准したのは1952年、そしてフレミングが著作権を取得、つまり 007 シリーズ第 1 作目 「カジノ・ロワイヤル」を発表した時点は 1953 年です。つまり戦時加算の対象外となるそうです。

 因みに今年で本国フランスでの著作権保護期間 (英国と同じく 70 年) が切れるサン=テグジュペリ (1900 - 1944) の著作権は戦時加算対象らしいですが、加算後の没後 61 年くらいが経過しているため日本ではパブリックドメインになったそうで、 9 年ほど前に青空文庫にて彼の著作が和訳され、公開されています。もっとも、この戦時加算は発表時起算らしいのでなんとも言いがたいところですが。

 いずれにせよ、こうした一連の解釈に則ればフレミングの原著は著作権が一部諸国で喪失し、パブリックドメイン扱いになるということだそうです。それ以外は戦時加算もあるようなので一概にはなんとも言えません。

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